性感染症
性感染症とは
性的接触で感染する病気を総称して性感染症、STI(Sexually Transmitted Infection)もしくはSTD (Sexually Transmitted Disease)といいます。
細菌やウイルスなどの病原体が、性器、泌尿器、肛門、口腔などに接触することで感染します。
性感染症にはいろいろあります。一つにかかって治っても、また同じ性感染症や他の性感染症にかかったり、一度に複数の性感染症にかかったりすることもあります。
また、感染しても軽い症状にとどまる場合や無症状であることもあるため、気付かない間に感染していることがあります。
そのため、不安に感じたら検査を受けることが大切です。
性感染症の治療を終えても、パートナーとの性行為を通じて再度感染してしまうピンポン感染があるため、治療が必要となったら必ずパートナーと一緒に治療を受けましょう。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌が感染することで起こる感染症です。
症状
- 性器や口の中に小豆大~指先くらいのしこりや痛みの少ないただれができる
- 痛み、かゆみのない発疹が手のひら、足の裏、身体中に広がる
- その後一時的に症状が消えるが、感染力が残っているのが特徴
- 治療をしないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死に至ることもある
検査
血液による抗体検査
感染機会から4週間以上経過していれば検査可能です。血液検査によってRRRとTPHAの定性検査を行います。
治療
ペニシリン系などの抗菌薬(飲み薬・注射)治療
妊婦が梅毒に感染すると、母親だけでなく胎盤を通じて胎児にも感染し、死産や早産になったり、生まれてくる子供の神経や骨などに異常をきたすことがあります。
淋菌感染症
淋菌の感染による性感染症です。
淋菌は弱い菌であり、粘膜から離れると数時間で感染性を失い死滅しやすいため、性交や性交類似行為以外で感染することは稀です。
性的接触を介する粘膜との直接接触が感染経路となります。何度も再感染することがあります。
症状
男性
- 排尿時の痛み、膿尿
- 精巣のあたりが腫れて熱が出ることがある
女性
- おりものが増える、下腹部の痛み、熱が出る、のどの違和感など症状がないこともある
- 進行すると不正出血や性交時の痛み、不妊の原因になることもある
検査
尿、尿道や子宮頸部からの分泌物、おりものを調べる(培養検査、PCR検査)
治療
抗菌薬治療
クラミジア感染症
クラミジア・トラコマチスが病原体です。
日本で最も多い性感染症で、特に若年層の女性に多いです。
成人では性行為により感染しますが、新生児は母親からの産道感染で起こります。
症状
男性
- 排尿時の痛み、尿道のかゆみや不快感
- 精巣のあたりが腫れて熱が出ることがある
- 不妊の原因になることもある
女性
- 症状はほとんどない(初期のおりものや軽い下腹部の痛み程度)
- 進行すると不正出血や性交した時の痛みがある
- 不妊の原因になったり、妊娠中だと早期流産になることもある
検査
尿、尿道や子宮頸部からの分泌物、おりものを調べる(PCR検査)
治療
抗菌薬治療
ヘルペスウイルス感染症
HSV単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる感染症です。
ヘルペスウイルスに感染している相手との性交によって起こります。
症状がなくても感染力が持続しているため感染源になる可能性があり、気づかずにパートナーにうつしてしまうことがあります。
一度感染すると、体内からヘルペスウイルスを取り除くことはできないため、ウイルスは体内の神経節に潜伏し続けます。
そのため、再発を繰り返すことがよくあります。
症状
- 性器に痛みやかゆみのある水ぶくれ、潰瘍
- 強い痛みがあり排尿が困難になる(女性)
- 太ももの付け根のリンパ節に腫れや痛みがある
- 初めて感染した時には発熱を生じることもある
検査
水ぶくれの一部をこする検査(顕微鏡検査、抗原検査、PCR検査)
治療
抗ウイルス薬(バラシクロビル、アシクロビル)による治療
炎症を抑える薬や痛み止めなど
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス6型、11型などが原因となるウイルス性感染症です。
自然治癒が多い良性病変ですが、パピローマウイルスの型によっては悪性化することもあるため注意が必要です。
稀に両親や医療従事者の趣旨を介して幼児に感染し発症することもある。
症状
- 尖ったトサカのようなイボ(ピンク色や茶色)
- 痛みや痒みはない
- 放っておくと大きくなる、増えてくる
- 女性の場合は膣の内側にイボができることもあり、発見が遅れることも多い
検査
病変部の視診で診断が可能です。PCRを行うこともあります。
治療
- 外科治療(電気メスやレーザーでの焼灼法、液体窒素による凍結法)
- 薬物治療(イミキモドクリームでの外用)
再発する場合には3か月以内に発症するとされているため、治療後も3か月ほど再発していないか注意する必要があります。
膣トリコモナス症
膣トリコモナス原虫という寄生虫が性器内に感染して起こる感染症です。
トリコモナスは原虫のため、性行為による接触がなくても下着やタオル、便器、浴槽での感染の可能性があります。
症状
男性
- 一般的には症状を感じないことが多い
- 尿道からの分泌物、軽い排尿時の痛み
女性
- 感染者の20~50%が症状を感じない
- あわ状の悪臭の強いおりものの増加、外陰部や膣の痛みや強いかゆみ
検査
性器・尿道からの病原体検出、病変部の顕微鏡検査
治療
抗菌薬治療
性器カンジダ症
カンジダという真菌によって起こる性器の感染症です。
女性の感染症の中では頻繁に見られます。
常在菌による自己感染が多く、性的接触でも感染します。
症状
男性
- 稀に尿道炎を起こす
- 亀頭周辺の赤み、ただれ、白い分泌物
女性
- 正規周辺のかゆみ、発疹
- 粘度の高い白いヨーグルト状(酒粕状・カッテージチーズ状)のおりもの
- 排尿時・性交時の痛み
検査
尿検査、膣分泌物検査
治療
抗真菌薬の膣錠や軟膏・クリーム、内服薬による治療
カンジダをなるべく予防するために、陰部を清潔に保ちなるべく乾燥した状態を保つことが重要です。
陰部を洗いすぎてしまうことで膣内の環境を保つ働きをする常在菌も洗い流してしまうことがあるため注意しましょう。
ケジラミ症
吸血性昆虫であるケジラミが寄生することにより発症する性感染症です。
主に陰部に寄生しますが、わき毛や胸毛、ヒゲ、眉毛など毛がある部分であればどこでも感染します。
ケジラミは人間から離れても48時間は生存するため、タオルや寝具を介しての感染ケースもあります。
症状
- 激しいかゆみ
- 下着に黒色点状のシミ(ケジラミが排泄した血糞)がつくことがある
検査
皮膚や陰毛、毛髪などの虫体や卵の確認、顕微鏡検査
治療
剃毛
薬剤の入ったシャンプーやパウダーを2週間使用する
- 0.4%フェノトリンパウダー
- 0.4%フェノトリンローション
家族やパートナーなど簡単に感染するため、家族やパートナーも同時に検査・治療する必要があります。
衣服や寝具はアイロンなどで熱処理するか、ドライクリーニングしましょう。
AIDS(後天性免疫不全症候群)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態をいいます。
近年、治療薬の開発が飛躍的に進んでおり、早期に治療を受ければ命を落とすことなく、通常の治療生活を送ることができます。
感染経路は性的接触による感染、血液を介しての感染、母子感染などがあります。
症状
- HIVに感染すると数週間後に発熱・筋肉痛・頭痛などの症状が現れる
- その後、自覚症状のない時期が数年~十数年続くが、その間も免疫力の低下が進行する
- 免疫が正常に働かなくなると日和見感染症を発症するようになる
- 指標疾患を発症した場合、AIDSと診断される
診断
血液中の抗原、抗体検査、遺伝子の検出、病原体のPCR検査
治療
抗HIV薬を服用することで、HIVの増殖を抑え、免疫力の低下を防ぐ
早期に発見し治療を始めることで、長く健康的な社会生活を送ることができる。