甲状腺疾患
甲状腺とは
甲状腺はのど仏のすぐ下にあり、蝶のような形をしています。重さ15~20g、大きさが4~5cmほどの臓器です。
甲状腺では「甲状腺ホルモン」という体に必要なホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは、新陳代謝や身体の成長を促す大切な役割を担っています。
バセドウ病とは
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰につくられ、甲状腺機能亢進症を起こす病気です。
20~40歳代の女性に多く、絶えず運動をしているような状態になるため、心臓をはじめ様々な臓器に負担がかかります。
新陳代謝が活発になりすぎて、以下のような症状が現れます。
- 体温の上昇 ・体重の減少 ・脈拍の増加
- 同期・息切れ ・手の震え ・落ち着かない
- 情緒不安定 ・甲状腺が腫れる ・眼球突出
原因
バセドウ病は甲状腺を刺激する自己抗体が産生され、甲状腺ホルモンが過剰に産生されることで発症する自己免疫疾患です。この抗体をTSH受容体抗体と呼びますが、産生される原因はよくわかっていません。
診断
血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べます。
場合によってはアイトソープ検査、エコー検査を行います。
治療
①薬物療法
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬、無機ヨウ素)を服用する方法です。
②放射性ヨウ素内用療法
甲状腺内に放射線のカプセル(アイトソープ)を取り込み、甲状腺細胞を破壊して数を減らすことでホルモン産生量を軽減させる治療です。
治療できる施設が限られています。
③甲状腺摘除術
もっとも早く確実に治療効果が得られます。再発がないように全摘した場合、甲状腺ホルモン薬を永続的に服用する必要があります。
橋本病(慢性甲状腺炎)とは
甲状腺に慢性的に炎症が起こる病気です。甲状腺機能低下症の代表的な病気です。
しかし、橋本病の患者様全てが甲状腺機能低下症になるわけではありません。
若い世代から中高年の女性に多いのが特徴で、成人女性の約3~10%を占めると言われています。
甲状腺の機能が低下することで、以下のような症状が現れます。
- 体温の低下 ・コレステロール値の上昇 ・脈拍数の減少
- 月経不順 ・肌の乾燥 ・むくみ
- 便秘 ・無気力感
原因
橋本病も自己免疫疾患の一つで、自己免疫の異常です。しかし、自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのか、未だに明らかになっていません。自己免疫異常による炎症により甲状腺が腫れたり、甲状腺機能異常を起こすことがあります。
診断
血液検査で甲状腺ホルモンの値やコレステロールの値を調べます。
甲状腺が腫れているかどうか、腫瘍の合併がないかどうか確認するためにエコー検査を行います。
治療
甲状腺機能が正常であれば体に影響がなく自覚症状はないので治療は必要ありません。
甲状腺が大きく腫れている場合や、甲状腺機能低下症になっている場合には、甲状腺ホルモン薬を内服するなどの治療が必要です。
甲状腺腫瘍
甲状腺にできるしこり(結節)のうち、一部が甲状腺腫瘍と呼ばれ、良性と悪性に分けられます。
悪性腫瘍
腫瘍とは、異常な細胞が無秩序に増殖し続ける状態のことを言います、そのうち、悪性腫瘍は、甲状腺ガンやリンパ腫などがあり、治療が必要となります。ただし、甲状腺のしこりのうち、悪性腫瘍の場合は約10%と決して高くありません。
甲状腺がんの中でも乳頭がんが90%以上を占めています。濾胞がん、髄様がん、低文化がん、未分化がん、リンパ腫は約1%を占めています。
良性腫瘍
上記と同じ腫瘍でも、良性に分類される種類があり、濾胞腺腫と呼ばれます。
症状
甲状腺腫瘍は大きくなるまで自覚症状がほとんどなく、早期のうちに甲状腺機能に異常をきたすこともほとんどありません。そのため、健康診断などの超音波検査で偶然発見されるか、
触ってわかるほどの大きなしこりになった段階でようやく気づく場合が多いです。
診断
甲状腺にしこりが見つかった場合、しこりの大きさとともに、悪性か良性かを調べます。
まずは血液検査とエコー検査を行い、悪性が疑われれば精密検査として穿刺吸引細胞診を行って、良性か悪性に識別を行います。
治療
良性の甲状腺腫瘍は、近接する臓器への影響が少なく転移の心配もないため、治療の必要がないことが多いです。
大きな場合や悪性が疑われる場合などは手術を勧められることもあります。
悪性腫瘍の場合は、手術が基本です。甲状腺がんは進行が遅いため、大抵はリンパ節に転移したガンも含めて切除することができます。
その他には放射線治療、薬物治療があります。